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歯が痛い!原因は“歯”の場合〜虫歯と歯髄炎編〜

院長ブログ

みなさん、こんにちは。
いつも、ももこ歯科のブログを読んでいただきまして、ありがとうございます。

患者さんは、歯が痛い時、まずは痛みをなくしたいでしょう。そして、その痛みの原因は何か、どんな治療法になるか、知りたいところだと思います。しかし、歯が痛くなったらすぐに歯科医院を受診できればいいのですが、なかなか難しいこともあります。

そこで、今回のブログは、虫歯と歯髄炎(一般的に言われている“歯の神経”が炎症を起こしている状態です)が引き起こす痛みと、痛かった時にどんな対応をすればいいか、についてです。

どんな歯の痛みが、虫歯や歯髄炎なのか

虫歯になると、冷たいものや温かいものに痛みを感じる時もあれば、感じない時もあります。虫歯が大きいから痛みが出る、小さければ痛みは出ない、というわけでもありません。

つまり、痛みの有無は、虫歯の大きさと関係ありません。ただし、大きな虫歯の方が痛みやすい傾向にはあるかもしれません。

虫歯や歯髄炎になった時の痛みは、冷たい物や温かい物を食べた時や、何もしていなくても一瞬だけズキッと強烈な痛み(自発痛といいます)、それから、何かに誘発された痛みがしばらく続くこともあります。

患者さんの痛みの感じ方のみで、治療方針を決定することはありません。問診と診査をして、診断後、治療方針を決定します。

問診や診査をした結果、歯髄の反応が正常であれば、歯髄保存は可能で、一度は生活歯髄療法を試みてもいいでしょう。しかし、問診や診査の結果、歯髄の反応が異常であれば、歯髄の保存は難しいため、根管治療が適応になります。

図1

図1の患者さんは、30代女性。初診時に、右上の白い矢印が指す歯に、レントゲン写真で虫歯が見つかりました。

虫歯は、歯の頭の部分(歯冠部)の約1/3ほどをしめ、歯髄の近くまで広がり、それなりに大きいです。左上の初診時の口腔内写真では、白い矢印で指す歯が虫歯の歯ですが、穴はあいていません。診査をしたところ、歯髄組織と根の先の反応は正常でしたので、生活歯髄療法を予定していました。

しかし、来院が途絶えてしまい、約1年半ぶりにいらした時、右下の奥歯がとても痛い、とのことでした。再来時の口腔内写真(左下)では、白い矢印で指す歯に穴があいており、レントゲンでも、白い矢印で指す歯には、くっきりと黒い影(虫歯)が認められます。

問診と診査の結果から、根管治療を行うことになりました。虫歯が軽症なうちに、きちんとした治療を受ける方がいいです。

虫歯や歯髄炎で歯が痛い時、どういう対処法がいいか

図1の患者さんのように、痛みが出てからすぐに歯科医院を受診できればいいのですが、なかなかそうはいかない患者さんも多いと思います。虫歯や歯髄炎は、歯が細菌に感染することで起こる病気ですが、細菌を殺す抗生剤(化膿止め)が果たして痛みを止めてくれるかどうか、お話しします。

痛みがある虫歯や歯髄炎の場合、一般的に、歯髄は細菌に感染していないことが多く(1)、抗生剤は有効ではありません。ただし、痛み止め(鎮痛剤)で虫歯や歯髄炎の痛みを軽減することは可能なようです。

Nagle(1)らは、40名の歯髄炎の患者さんを対象に、抗生剤の有効性を研究しました。20名の患者さんが抗生剤(ペニシリン)を7日間内服し、残りの20名は抗生剤を内服せず、40名全員に鎮痛剤を処方し、痛かったときに内服してもらいました。

その結果、抗生剤(ペニシリン)を内服していないグループと内服したグループとでは、鎮痛剤の内服回数に変化がありませんでした。言い換えると、抗生剤を内服しても、痛みは改善しないために鎮痛剤を必要とした患者さんが多かったようです。あくまでも、鎮痛剤の内服で痛みを軽減するのは、短期目標です。

冷たいものや温かいものにしみる、あるいは痛い場合は、診査の結果次第で生活歯髄療法が適応になることもあります。歯の痛みを取る最善の方法は、早く歯科医院を受診し、適切な治療を受けることです。

次回のブログは、歯髄炎よりも痛いかもしれない歯の痛み:歯髄壊死という病気についてです。お楽しみに。

(1)Nagle, Douglas, et al. “Effect of systemic penicillin on pain in untreated irreversible pulpitis.” Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology, and Endodontology 90.5 (2000): 636-640.